【旅:奥入瀬渓流B】



【2日目 その2】

流れの向こうにも目を配りながら歩いていると、ゴツゴツとした何段もの黒い岩肌を撫でるように流れ落ちる瀧が木の間に現れた。

近くまで行けそうなので、行ってみる。

「九段の瀧」。
岩肌はどっしりとしていて男性的だが、その流れは何とも艶やかでしっとりとしている。



さらさらと流れ落ちる音は、未だに耳に蘇ってくる。


こうして大小いくつかの瀧を流れの向こう側に見つつ歩いていると、これまでとは明らかに異なる大きな水音が耳に入ってくる。
そろそろこのあたりは、十和田湖に近いはずだ。

流れに沿って進んでゆくにつれ、かの水音もどんどんと近づいてくる。

視界が開けると、そこには幅20mはありそうな瀧が現れた。
「銚子大滝」というらしい。



渓流の源である十和田湖を銚子[徳利]に見立て、そこから流れ出る注ぎ口の“くびれ”にあたるので、この名前がついたのだそうだ。

高さはさほどないものの、なかなか豪快だ。

流れ落ちるその岩面は、見事に垂直な壁となっているが、人工のものかと思いきや、
そうではなく、ちょうど断層のズレの部分にあたるらしく、天然の造物なのだそうだ。

よくもまあ、この場所に断層ができたものだと、自然の妙に感心する。

しかも渓流の締めくくりに、この大瀧が位置しているというのも偶然ではなく、もはや何者かの演出ではないかと、思わざるを得ない。

瀧の上のほうへ遊歩道の階段を上がると、一転してそこは大きな溜池のようになっており、そこに溜まった湖水が大瀧のところで一気に流れ落ちていることがわかる。



その溜池から瀧と反対のほうに目をやると、そこにはこれまでの変化に富んだ木々と水の流れとは全く異なった、広々とした開放的な水面が広がっている。 奥入瀬渓流の源、十和田湖だ。

時計を見ると、13時前。 ちょうどホテルから約5時間の道のりだった。



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